少額の投資に関して譲渡所得や配当所得に課税されないNISAの制度が、2020年の税制改正で変更されることになりました。今回は改正のポイントについて解説します。
20歳以上の国内居住者が口座を開設し、1年間の新規投資額の上限120万円から発生した譲渡所得や配当所得について、5年間課税されません。2023年まで新規投資することができます。投資方法は、例えば一括して120万円等でも、毎月10万円等のような定時定額の積立でもかまいません。投資できる金融商品は、上場株式、ETF、上場不動産投資信託（REIT）等です。預貯金のように元本が確保されている商品ではない点に注意が必要です。
今回の改正で、2024年からの新規投資から、2階建ての構成となります。
1階部分は、現状のつみたてNISA同様の制度で、年間20万円を限度に定時定額で積み立てるものです。投資できる商品は「つみたてNISA」で認められているものと同様で、公募株式投資信託等一定のものに限定されています（後述）。個別の株式は認められません。
2階部分は、原則として1階部分で投資した場合にのみ投資可能な部分で、年間102万円を限度とします。投資方法は、一括・積立を問いません。ただし、投資対象については、整理銘柄の株式やリスクの高い投資信託等は除外されます。これにより、1階部分と2階部分を合計すると年間122万円が1年間の新規投資額の上限となります。5年間の累積投資額の上限は610万円（＝122万円×5年）となります。
新しいNISAの制度は、現状では2028年までの期間限定です。また。後述のつみたてNISAと同一年に口座開設することはできず、いずれかの選択適用となります。
現行の一般NISAの利用者や、投資経験者については、1階部分を利用しないことを金融機関に届け出れば、2階部分のみ利用することは可能です。この場合の投資対象は上場株式のみとなり、公募株式投資信託に投資することはできません。また、新しい一般NISAで非課税期間の5年を経過した後は、さらに非課税期間を5年間延長することができます（ロールオーバー）。1階部分は後述のつみたてNISAへロールオーバーすることも可能です。
つみたてNISAは、20歳以上の国内居住者が口座を開設し、1年間の新規投資額の上限40万円から発生した譲渡所得や配当所得について、20年間課税されません。投資方法は積立に限定されており、一度にまとめて40万円を投資する等のような方法は認められていません。
投資できる金融商品は、公募株式投資信託またはETFのうち、投資対象や手数料等について一定の要件を満たしたもので、金融庁に届出された商品に限定されています。2037年まで新規投資することができますが、一般NISAと異なり、ロールオーバーの制度はありません。制度発足時（2018年）に積立を開始した人は20回新規投資することができますが、2020年に積立を開始した人は18年しか新規投資できません。
今回の改正で、2042年まで新規投資できる期間が延長されます。これにより、2023年までに積立を開始すれば、20回の積立が可能です。前述のように、一般NISAと同一年に口座開設することはできず、選択適用となります。
未成年者名義の口座を開設し、親等が親権者として1年間に80万円の新規投資を2023年まで継続することができる制度です。当該未成年者が18歳になるまでに払出す場合は、過去の運用収益に遡って課税されます。
利用実績が乏しいことから、今回の改正で2023年末の期限をもって新規の口座開設が終了となります。そして、2024年から既存口座の払出制限を解除し、全額を払出した場合は運用収益に課税されません。払出の詳細については今後明らかとなる予定です。
現行の一般NISAを活用している人は、今後非課税期間が満了したときに、特定口座に移管する、売却する、という選択肢に加えて、取得価額102万円分までは新NISAにロールオーバーする選択肢が加わることになりました。その際の取り扱いについては、今後明確になると思われます。これらの動向に注目しておきましょう。
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