突然ですが、みなさんは誰かをホメることは得意でしょうか?
世の中を見渡してみると、誰かをホメる言葉よりも「ダメ出し」や「叩き」の言葉のほうが圧倒的にあふれています。「ダメ出し」したりされたりすることは慣れていても、ホメたりホメられたりする機会は少ない・・・という人も少なくないかもしれません。
そもそも「ダメ出し」は相手を否定するだけなので、とても簡単にできてしまいます。一方、相手をホメることは簡単ではありません。「人を上手にホメたいけれど、どうすればよいかわからない」という人もいるのではないでしょうか。
コピーライターの澤田智洋さんは、「相手にホメ言葉を贈る『ホメ出し』は、キャッチコピーを書くことと極めて似ている」と話します。
「キャッチコピーを考える作業とは、対象となる企業や商品の魅力を観察し、発見し、言葉にする行為です。これは『ホメ出し』の作業そのものだといえるでしょう」(澤田さん)
そこで今回は、澤田さんにコピーライター式の「ホメ出し」の技術を教えてもらいましょう。ホメるのが苦手という人も、この手順に従えば「ホメ出し」の達人に一歩近づくはずです。
「ホメ出し」は、相手のいいところを見つけることからスタートします。そのためにはまず、「惚れレンズ」を装着して相手を見てみましょう。「惚れレンズ」とは、恋人の短所も長所に見えてしまう恋愛中のハートマークの目のような、相手のいいところしか見えなくなるレンズ(=視点)のこと。たとえば、ドラえもんに出てくるスネ夫は金持ちで自慢げな嫌味キャラという印象ですが、「惚れレンズ」を装着して見ると最先端のオモチャを紹介してくれる情報通と好意的にとらえることができます。もちろん、実際に「惚れレンズ」という道具があるわけではありません。「『惚れレンズ』を装着するぞ」と意識することで、相手に対するネガティブな先入観や偏見を払拭し、「相手は素晴らしい人だ」と惚れ込む視点に切り替えるということです。
「惚れレンズ」を装着したら、相手をつぶさに観察しましょう。このとき、さまざまな観察軸から多面的に相手の魅力を分析することがポイントです。ファッションや持ち物等からその人のこだわりや好み、価値観を観察する「外見軸(容姿は含まない)」、どんな性格かを観察する「性格軸」、どんな行動を取っているかを観察する「行動軸」、価値観や哲学等を観察する「信念軸」、将来のビジョンや夢を観察する「未来軸」等に加えて、オリジナルの観察軸も自由に作って、多方面から相手を観察してみましょう。この観察から浮かび上がってきた言葉の数々が「ホメ出し」のネタになります。
「惚れレンズ」を装着して相手をよく観察すると、相手の魅力を発見できるようになります。発見とは相手のいいところに「ハッ」とすること。まさに「ハッ見(発見)」であり、そんな「ハッ」とした瞬間こそが「ホメ出し」の絶好のタイミングです。「ハッ」とする発見を見逃さないコツは、いつも手元に「いいね」ボタンがあるような気持ちでいることです。SNSを見ているときに「いいね」ボタンを押したくなるのは、ボタンが目の前に設置されているから。同じように、相手と対面しているときはいつも手元に「いいね」ボタンがあると思えば、押したくなるものです。すると、相手の「ハッ」とする瞬間を逃さずキャッチしやすくなるでしょう。
国民全員がメディア化しているといってもよいこの時代、一人ひとりの言葉には社会に対する影響力があります。
「ダメ出し」にあふれた社会は暗く窮屈ですが、ひとりでも多くの人達の「ホメ出し」の積み重ねによって、明るく心地いい社会に変えていけたらよいですね。
コピーライター。世界ゆるスポーツ協会代表理事。1981年生まれ。言葉とスポーツと福祉が専門。幼少期をパリ、シカゴ、ロンドンで過ごした後、17歳で帰国。2004年、広告代理店入社。アミューズメントメディア総合学院、映画「ダークナイト・ライジング」、高知県等のコピーを手掛ける。2015年にだれもが楽しめる新しいスポーツを開発する「世界ゆるスポーツ協会」を設立。これまで100以上の新しいスポーツを開発し20万人以上が体験。また、一般社団法人障害攻略課理事として、福祉領域におけるビジネスを推進。著書に『わたしの言葉から世界はよくなる コピーライター式ホメ出しの技術』(宣伝会議)、『ガチガチの世界をゆるめる』(百万年書房)、『マイノリティデザイン』(ライツ社)がある。
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