将来のマネープランを考える上で、大きな比重を占める可能性があるのが高齢者施設の入居費です。どのような施設があり、入居費にどれくらいかかるのでしょうか。
介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんは、「高齢者施設は大きく分けて『介護型』と『住宅型』があります」と話します。
「『介護型』とは支援や介護が必要な人向けの高齢者施設で、24時間体制で介護サービスが提供されます。一方『住宅型』は比較的元気な人向けの施設で、介護サービスは費用に含まれていません」(太田さん)
また、介護保険の要介護認定(支援・介護の必要度を、軽度から重度まで7段階に分類。要支援1~2、要介護1~5で認定される)を受けて利用する公的な介護保険施設か、民間企業が運営する民間施設かによって、サービスや費用面に違いがあるといいます。各施設の主な特徴を次にご紹介します。
(1)特別養護老人ホーム(特養): 常時介護が必要で、在宅での生活が困難な場合に入居できる。入居条件は要介護3(起き上がりや寝返りが自力では行えず、排泄・入浴・衣服の着脱などで全介助が必要)以上。居室は個室または相部屋。初期費用はかからず、月額利用料は5~15万円。低コストで人気が高く、入居待機者が多い。
(2)老人保健施設(老健): 入院治療を終え、自宅へ戻るためのリハビリが必要な場合に入居できる。入居条件は要介護1(立ち上がりや歩行が不安定で、排泄・入浴などで一部介助が必要)以上。居室は個室または相部屋。初期 費用はかからず、月額利用料は6~17万円。特養への入居待機場所として利用する人も多い。
(3)介護療養型医療施設・介護医療院: 急性期の治療が終わっても、寝たきりなどの理由で長期療養が必要で在宅介護が難しい場合に入居する。病院に併設されていることが多い。入居条件は要介護1以上。居室は4人部屋が多い。初期費用はかからず、月額利用料は6~17万円。介護療養型医療施設は2024年3月までに廃止され、介護医療院などに転換される。
(1)介護付き有料老人ホーム: 24時間体制の介護サービスが提供される。要介護1以上の人を対象とするところが多いが、なかには要支援や自立の人も入居できる施設がある。居室は個室が多い。高額な入居一時金を要するところが多く、初期費用は0~1億円、月額利用料は10~40万円。介護サービスにかかる費用は介護保険を利用することになるが、手厚い介護を行う施設では別途費用がかかる。
(2)特定施設に指定されたサービス付き高齢者向け住宅(サ高住): 24時間体制の介護サービスを提供する、高齢者向けの賃貸住宅。入居条件は要支援1以上。居室は個室。初期費用は0~数十万円、月額利用料は12~25万円。介護費用は要介護度ごとの定額制。
(3)グループホーム: 認知症の高齢者が最大9人との共同生活を送りながら介護サービスや生活支援サービスなどを受ける施設。入居条件は要支援2(立ち上がりや歩行が不安定で排泄・入浴などで一部介助が必要だが、身体状態の維持や改善の可能性がある)以上。居室は個室。初期費用は0~100万円、月額利用料は12~18万円。
特定施設に指定されたケアハウス(軽費老人ホーム):家庭環境や経済面などの理由で、自宅での生活が困難な高齢者向けの施設。所得が低い場合は費用の軽減がある。24時間体制で介護を受けることができる。入居条件は要支援1以上。居室は個室。初期費用は0~数百万円、月額利用料は10~30万円。
(1)住宅型有料老人ホーム: 食事のサービスや日常生活の支援、レクリエーションなどのサービスが受けられる。比較的元気 な人を対象としていることが多い。居室は個室が多い。初期費用は0~1億円、月額利用料は10~40万円。
(2)サービス付き高齢者向け住宅(サ高住): 自立した生活を送れる人や、要介護度が比較的軽度な人向けの賃貸住宅。安否確認と生活相談サービスが実施されている。居室は個室または2人部屋。初期費用は0~数十万円、月額利用料は8~20万円。
ケアハウス(軽費老人ホーム): 基本的な内容は前出のケアハウスと同様だが、介護サービスは含まれない。食事や安否確認、レクリエーションなどのサービスが提供される。対象は身の回りのことができる60歳以上の高齢者またはどちらか一方が60歳以上の夫婦。居室は個室または2人部屋。初期費用は0~数百万円、月額利用料は8~20万円。
より詳細に検討したい場合は、各自治体に設置されている地域包括支援センターにて無料で相談することができます。 積極的に相談してみるといいでしょう。
監修者 太田差惠子さん
介護・暮らしジャーナリスト、NPO法人パオッコ理事長、AFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)。
1993年頃より老親介護の現場を取材。取材活動より得た豊富な事例をもとに「遠距離介護」「仕事と介護の両立」「介護とお金」等の視点でさまざまなメディアを通して情報を発信する。企業、組合、行政での講演実績も多数。1996 年、親世代と離れて暮らす子世代の情報交換の場として「離れて暮らす親のケアを考える会パオッコ」を立ち上げる。著書に『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと』『高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本』(以上、翔泳社)、『遠距離介護で自滅しない選択』(日本経済新聞出版)などがある。
太田差惠子のワークライフバランス
http://www.ota-saeko.com/
NPO法人パオッコ〜離れて暮らす親のケアを考える会〜
http://paokko.org/
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